北マリアナ諸島・ウミウシ考

ボクは居ないけどね〜

#2 アマモ場の仲間たち


2004年5月、メモリアルパーク前からビーチロード沿いの現地へ移転した我々がアマモ場と呼んでいるのは、その移転先であるショップ真正面のビーチ。ここは水深1.5m前後のとても浅いリーフ内なので、通常のダイビングポイントとしての利用は無理。しかし海草(うみくさ)・海藻(うみも・かいそう)が生い茂るこのビーチには、絶対ナニかがいる筈。
道路を横断さえすればいいんだ!という事で調査を開始してみれば、サイパンの他のダイビングポイントとは少々趣の異なる顔ぶれに出会う事となったのです。

では、アマモ場の仲間たちをご紹介致しましょう。


*ウミウシの和名と学名をクリックすると、その種のページに移動します。
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◆ショップ前のアマモ場 - ガラパン地区
和名
学名
コメント
ドーリス科 コバンウミウシ
Asteronotus cespitosus
キリリビーチを散歩していて出会う個体よりも、大きなサイズのタイプに出会えている。ヒト各々好みがあるだろうが、よく視ると可愛いヤツ。
* キイロクシエラウミウシ
Doriopsis granulosa
フォーラムに由ると、黄色いスポンジを食べるのはキイロウミウシだそう。しかし今まで確認した個体は、スッキリとした黄色ではないのが残念。アオクシエラウミウシと分類するのに悩む。
* アオクシエラウミウシ
Doriopsis Pecten
茶系でキイロクシエラウミウシと混同してしまう個体もあるが、こちらは名前の通り綺麗な青色と半透明のコンビネーションが目立つ。
* コシボシウミウシ
Sclerodoris sp.
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
* スクレロドーリス属の1種
Sclerodoris sp. 2
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
ラドマン博士から、解剖しなくちゃわからない、というコメントを頂いた稀種。
(Jun.2009追記)
クロシタナシウミウシ科
ホンクロシタナシウミウシ
Dendrodoris nigra
他のビーチポイントでも確認。
アマクサウミウシ科
ハラックサウミウシ
Harllaxa indecora
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
オオミノウミウシ科
ミノウミウシ
Anteaeolidiella indica
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
アオミノウミウシ科 ハクセンミノウミウシ属の1種
Cratena sp.
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
* チゴミノウミウシ
Favorinus japonicus
幼体のみ確認。成体は他のビーチポイントにて確認済み。
オショロミノウミウシ科
オショロミノウミウシ属の1種
Cuthona sp.8 (Sea Slug Forum)
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
他国での目撃情報は、日本では高知県、オーストラリアではニューサウスウェールズ州より、何れも浅瀬で視られている。
ゴクラクミドリガイ科
エリシア・トメントサの1種
Elysia cf. tomentosa
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
* ヒラミルミドリガイ
Elysia trisinuata
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
チドリミドリガイ科
チドリミドリガイ
Plakobranchus ocellatus
各ポイントによりカラーバリエーションあり。アマモ場のタイプは、ラウラウビーチと共通点があるが、特にここで多く視られる個体は、眼の周辺にある眼紋の特徴がわかりやすく、大きな移動がないので、データが揃えば個体識別が可能。
オオアリモウミウシ科
テングモウミウシ
Costasiella kuroshimae
アマモ場に行けば、ほぼ年中視られる種。ラウラウビーチでも確認しているが、海藻のハウチワ属を見つけられたならば、高確率で遭遇可能。
* クサイロモウミウシ
Costasiella paweli
サイパンでは、アマモ場でしか確認していなかったが、2007年3月、テニアンやオブジャンでも確認。
* ウサギモウミウシ
Costasiella usagi
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
ハダカモウミウシ科
アリモウミウシ属の1種
Ercolania sp. 5 (Sea Slug Forum)
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
フォーラムにも、サイパンからの情報のみ。
※2007年10月にはラウラウビーチでも遭遇。
ナギサノツユ科
フリソデミドリガイ
Lobiger viridis
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
* ナギサノツユ
Oxynoe viridis
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
ミドリガイ科
チョウチョウミドリガイ
Phanerophthalmus smaragdinus
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
アメフラシ科
ウミナメクジ
Petalifera punctulata
サイパンでは現在、ここでしか確認していない。
* * * *


◆アマモ場 - ススペ〜ガラパン地区
和名
学名
コメント
イロウミウシ科
サラサウミウシ
Chromodoris tinctoria
鹿角ポイント:
日本ではお馴染みらしいけれど、この種は現在、ここでしか見掛けていない。
ボートで出掛ける体験ダイビングに利用されたり、シーカヤック・ダイビングでしか行かないだろう所で、実は冬場は流れるので、ここは穴場な予感。
ドーリス科
コバンウミウシ
Asteronotus cespitosus
ススペ地区:
キリリビーチの砂の上で転がっていた。サイズは50〜150mmと、目立つ大きさのみ確認。また波打ち際をスルスルと散歩している姿も目撃済みなので、水中では相当数を確認出来るのではないかと思われる。
アメフラシ科
ジャノメアメフラシ
Aplysia dactylomela
ススペ地区:
キリリビーチの砂の上で転がっていたので、水中での確認ではない。釣り人に引っ掛けられたか、水遊びをしていた誰かに砂の上へ放り投げられたと思われる。200mmもあるアメフラシが、もそもそと海藻を食べる様をリアルで眺めたいものである。
* * *
*

Feb.2007


ところで、アマモ場の仲間たちは、こんな海草・海藻たちと共存しています。

ヒロハサボテングサ Halimeda macroloba
クビレヅタ Caulerpa lentillifera
ヒロハサボテングサ Halimeda macroloba
イワヅタ科。○の中にウミウシを発見!
この種は水深が深いポイントでも多数確認している。砂上から出ている部分とほぼ同じ長さで、球根のように形成された根を持つ。
クビレヅタ Caulerpa lentillifera
またの名を海ぶどう。海のキャビアとも呼ばれる食用海藻。
タカノハヅタ等、他にもイワヅタ科の仲間を数種観察可能。茎は砂上に広がるが、根は砂地に浅く張る。現地では食べていません。
ウミヒルモ Halophila ovalis
トチカガミ科
丸い葉が水底から顔を出しているように見えるが、葉同士は地下茎で繋がっている。○の中にはやはりウミウシが移動している姿を確認。ジュゴンの好物らしい。
*ウミヒルモの仲間の方が良い?
サボテングサ Halimeda opuntia
サボテングサ Halimeda opuntia
浅場に生息するイワヅタ科で、ヒロハサボテングサよりも小型。
海が荒れると打上げられ易く、日に晒され白化したものは、石灰質のブレスレットの様にも見える。乾燥後に砕け、次第に白砂へと変化して行くものもあり。
クビレヅタやウミショウブの根本に生息しているのを多く確認。
トゲノリ Acanthophora orientalis (or ? Acanthophora specifera)
他の海草等に絡み大量繁殖し、海が荒れる度に打上げられ黒く乾燥し、ビーチの美観を損ねる嫌われ者。人間の食用ではない。
沖縄ではアメフラシが食すのが目撃されているそうなので、彼等に駆除してもらえば良いかも。
ウミショウブ Enhalus acoroides
他の地域のものと変わらず1m程に成長する。2006年5月下旬には、潮に流された雄花を確認済み。
現在、ハファダイホテル近辺から球場近辺(ガラパン→ススペ地区)まで生息を確認済み。光合成により酸素を大量生産している模様。
アオモグサ Bloodlea coacta
アオモグサ科の海藻で、触るとポロポロと崩れやすく、まるで劣化した食器洗いのスポンジの手触り。
画像は波打ち際に上がったものだが、海中で同種の中にアリモウミウシ属の1種が潜んでいるのを確認。
ハウチワ属の1種
まだ詳しい種は同定されていないが、これを見つければウミウシが近くにいるようである。長い球根のように見える根が砂中にある。
○の中にはテングモウミウシと、卵隗がいくつか確認されている。
ウミショウブの根本は、トゲノリやサボテングサ等で覆われている。
多分、これ等の余計な海藻は無くても良い筈だと思うのだが。。。。彼等はリーフ沖へ土砂が流出しないよう、防波堤の役割を担っているらしい。
ウミジグサ・他
Halodule uninervis and somemore kinds ....
葉の長さは20cm程で、ウミヒルモと場所を分かち合っている。海が荒れる度に打ち上がるのは、干潮時には水面から顔を出す事も多い浅瀬にいるから?ただしこの画像のように団子状なのは珍しい。
*よく視ると数種あるようなので、全ての種を列記出来るよう精進します。
*Dr.Starmerよりアドバイスを頂き、画像はウミジグサに変更。
Thanks! Apr.'07

ボウアオノリ
Enteromorpha intestinalis

アオサ科の緑藻。
この種は、穏やかなコンディションが続き海水の動きが少ない時、波打ち際に大量に発生する。時期的に微小な幼魚の隠れ家(3〜5月頃がピーク)にもなる。
ウスユキウチワ
Padina minor

他のポイントでは同種に擬態したスカシウミナメクジも確認。
しかし後ろに控えるトゲノリと共に、荒れたビーチに打上げられて美観を損ねる嫌われ者でもある。
背景はトゲノリ。

他に視られる海草・海藻


褐藻網は、ホンダワラ科のラッパモク Turbinaria ornata 等。

アオサ藻綱は、ミル科も多くみられ、マガタマモ Boergesenia forbesii やオオバロニア Ventricaria ventricosa は、海が随分と荒れた後に打ち上がっているのを目撃する。

他にも多くの種をみるが、同定まで至らない海藻や、打ち上がった風景はこんな感じ。



海ぶどうを舐め回し満腹になったナギサノツユは、
海草から溢れる酸素の泡の中で
まるで唄っているかのよう。

皆さん、アマモ場って結構頑張っていますよ。
きれいにしましょうね。

ウミショウブの雄花・2〜3mm
May.27.2006
次回はアマモ場の海上を
走っている雄花をみたい。

サイパン在住のDr.Starmerによると、2002年の記録では、4〜9月に5回、開花を確認しているのだとか。サイパンでは何度も起こり得るらしい。シンガポールやパラオでも同じなのか調べたいが、まずは1年に何回も開花するのかを画像に残せればと願う。Apr.'07
参考:サイパンdeエコライフ・アマモ場

Mar.2007


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